SHEINに見る戦略雑記
Z世代を中心に今年話題になっているSHEIN。
メディア取材に慎重なことからあまり明らかになってはいないが、あくまで私見を基本に雑記レベルで、戦略を見てみようと思います。
1.低価格とターゲットの量
そもそもファッション業界は、流行の移り変わりが速く、その結果、在庫を抱えてしまい利益がでない、なんてことが起こり得るところです。
SHEINも自ら
選択肢を提供するか、在庫の圧力と無駄を減らすかを選択する必要がある
と言っています。
(((SHEIN ブランドストーリーより)))
SHEINの特徴の一つである低価格を実現するには、ターゲット層のボリュームが大きい層を狙い、規模の効果を狙う必要があります。
ファッション業界に限ったことではないですが、流行の移り変わりが速い業界においては特に大事になる点です。
この点をみていくと、SHEINは中国企業であっても、全世界の17の言語圏に対応し150カ国に展開しています。“国”でなく“言語圏”にしているところもミソですね。
当初から販売量を確保するために、多くの国のターゲット層に販売し、価格を押さえて行こうとする戦略に合致します。
2.展開スピードを速くする
なぜ2008年と創業間もないのに150カ国も発売できたのでしょうか?
それは、ECだけで展開しているからです。
他の大手もECには当然取り組んでいますが、EC化率100%はSHEINだけで、ユニクロは約17%、ZARAは約26%と店舗中心なのがわかります。
私も経験ありますが、店舗を作って、運営するのは、店舗の数だけ手間がかかります。販売する優秀なスタッフを採用、育成、維持させるのは大変で、店舗が増えれば増えるほど、その人数が必要になります。
一方、ECも決して楽ではありませんが、リソースをECに集中できることは、複数店舗を経営するのと比較すると大きいことです。
日本のSHEINは、ショールームとして原宿に店舗を構えています。ここでは販売はしていなく、商品との接点の場としているみたいです。
実際のものをみてみたい、というECの弱点を補う役目なのでしょう。
ECに特化してこの規模まで展開している低価格ファッション企業は珍しく、SHEINの特徴であり、流行の速いファッション業界で販売量を速く確保するにはあっているかもしれません。
3.EC化を始め徹底したIT化でDX
ECだけの販売にすることにより、物流、在庫、商品企画などのバックエンドもシンプルになり、店舗とECの両立てを考えより、ビジネスが組み立て易くなります
(もっとも世界相手のなので、それはそれで大変なのはいうまでもないが、単純化するために、店舗とEC、ECだけの比較に限定)
最近のスタートアップらしく、顧客から見える表のECを始め、業務側のバックエンドも徹底的にIT化にしているらしく、商品企画から、工場への発注、売上データの分析、追加生産数など、徹底的にIT化していそうです。
それはブランドストーリーにも書かれており、“
と自ら謳っています。*3
中国チャットアプリwechatを積極的に使うことで、どんな企業規模でもSHEINの業務が請け負えるように対応しているみたいです。
在庫管理には、商品バーコードをwechatのスキャンしたり、発注、検収などもwechatで行われるそうです。
私も数年前に現地でwechatを見ましたが、スーパーアプリと言われるのがよく分かるほど、全て集約できて生活に欠かせないインフラアプリでした。
当然、wechatに接続させるAPIなどは自社で開発して、管理用のソフトと共に連動していると思われますが、関係会社に変な強要をせずに、すぐに業務に取りかかれる様な設計をしているのがすごいですね。
日本だとLINEですべての業務が完結するようなものです。もしかするとpaypayを基軸にこのあたりを狙って来てもおかしくないと個人的に思います。
4.販売機械を逃さず、在庫リスクを抑える
最初の方に、ファッション業界は流行が速くて、一歩間違えると在庫を抱えてしまう、ということを言いました。これを防ぐには、発注から商品投入までを短い期間にして、さらに極小ロットで製造できれば、リスクを少なくすることができます。
SHEINは、なんと100枚を1ロットして製造しているそうです。
この発注を請け負っているのが、世界の下請けが集まる中国広州の工場です。
そこででくるのが、先のwechatです。
受け手の企業規模に関係なく受発注できて、柔軟に対応できます。
どの業界でもそうですが、あるていど企業規模が大きくなると、まとまった単位で受注して売上、利益をとりたがります。
一方、中小零細企業は、小さいロットの方が生産規模からみてありがたいです。
この様に、ITで完結することで、ファッション業界のネックとなる、販売機械と在庫の問題を、少しでも回避しようとしている姿が伺えます
■この先、SHEINの快進撃は続くのか?
世界的な物価高の影響もあり、価格を抑えたポジションはしばらく支持されるのではないかと今の時点では予測されます。
気なる点がないこともないです。
ロシアのウクライナ侵攻で、世界を股にかけたサプライチェーンは不安定になりました。この点は今後も注意が必要でしょう。
その他、模倣品、品質、SDGs的観点などの懸念材料がどう影響してくるかは未知ですが、昨今の情勢からみて、ある一定のきっちりした対応をしないことには、見放されてしまう可能性が高くなります。
これらの払拭するタイミングはあるはずで、その時にどの様に変わるかが次は楽しみです。
■他のファストファッションは負けてしまう?!
ここで他のファストファッション大手がどういう戦略を取るかです。
私は、より棲み分けがはっきりして生き残りをかけるのではないかと思ってます。
わかり易くユニクロを例にとってみてみると、数年前からLifeWearというコンセプトを打ち出してから、明らかに変わって来ました。
そこまで流行りでなく生活の中の定番品を、質よく、低価格で、店舗のリアルに顧客と接して提供していく姿勢がはっきり出てきました。
これまでよりさらに、LifeWearということを意識して進んでくると想像します。
他の大手ファストファッションも同様に、自社の独自性をもっと色濃く出してくるため、負ける、ということはないでしょう。
いち消費者として楽しみです。
■戦略は?
おなじ土俵でも、自社はどういう会社を目指すのかということを明確にすることで、戦い方もみな同じにならず独自性をもって戦えます。
戦略は戦略だけでは成り立たず、その元となる、自分たちの目指すあり方があって成り立ちます。
今回は最近話題のSHEINの戦略を価格、ITの切り口から見てきました。
この様に話題の会社、気になる会社を例にとって、調べてみると戦略がわかって、楽しいです。
専用のアプリ開発を行わず、小規模の下請け企業でも対応できるようになり、スピード化を図っているそうです。
上記マトリックスにすると、右上のエリアに行ける企業は限られており、代表的なところでいうと、
というところでしょうか。
この3つの企業とSHEINの売上を比較してみます
SHEIN 約1兆円
ユニクロ 2.88兆円
ZARA 2.5910兆円
※2020年、